「絵本のまち、かわさき」と社会起業家 小松雄也の活動記録

【経歴】神奈川県川崎市出身。明治大学法学部を卒業後、出版業界最大手に就職。入社1年目で複数の企画で全社1位となり、社内のビジネスコンテストでは優秀アイデア賞を獲得。その後独立。 学生時代に周りの「読書離れ」が進んだ現状に強い危機感を抱く。大学図書館で一人奮闘する中、書評合戦ビブリオバトルと出会い、本を通じた人々の交流に可能性を見出す。2014年に読書を通じた世代間の交流、地域活性化や読書教育へと本格的に取り組むため、在学中に一般社団法人ビブリオポルトスを設立。小中学校での読書教育や、新聞で書評を担当する等、精力的な読書普及活動を続ける。第31回人間力大賞 会頭特別賞。「川崎市における読書普及活動」で第10回マニフェスト大賞 審査委員会特別賞(秋吉久美子選)を受賞。

カテゴリ: 漫画

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「乙嫁語り」森薫 エンターブレイン

乙嫁語り 1巻 (HARTA COMIX)

英国文化を詳細に描いた「エマ」に続き、森薫の長編第二作です。
1800年代後半の中央ユーラシアを舞台とした乙嫁たちの日常を描いています。
乙嫁とは「可愛いお嫁さん」の意味であり、本作には様々な魅力的な乙嫁たちが登場します。
先日(2018年2月15日)に最新第10巻が発売されましたので、これを機会に是非とも触れてみてください!

1 豊かに感じるのは何故だろうか
まずはこうやって石を並べるだろ。石の上に柱を立てる。柱の上に肘木を乗っけて……(中略)……そっからさきは嫁さんたちに任しておけばいい。床にじゅうたん敷いて、壁掛けかけて、そうすりゃ一軒出来上がりだ。
コンクリートの家に住む私にとって、自然に近い家に大きな魅力を感じます。実際に木造の一軒家に3年間住んでいたことがありますが、木の家はコンクリートの家とは違い、家の中の空気が瑞々しく潤い、その空間にいるだけで力が湧いてくるような気がします。特に冬場でも木の家は乾燥しないため、とても居心地が良いです。英気を養うには、より自然に近い木の家が最適であります。

2 歌と生きる日常
わたしの馬は 金の馬 お前に乗せよう黄金の鞍を おまえにかけるは銀のはみ 鳥が空をとぶように 青い草野を駆けめぐる
私の世代には、民謡の伝承があまりされていないように思います。祖父母の世代は、上から伝わってきた歌をよく口遊み、父母の世代もそれを聞いて育っています。しかし、娯楽の多様化の影響か今の若者で、口承されてきた歌を諳んじることのできる人は、私も含めて圧倒的に少ないため、何だか寂しい気がします。祖父母に会う際には、色んな歌を聞かせてもらうのですが、幼少期を過ぎると口頭伝承を覚えるにはなかなかこれが難しいです。子供の頃からそういった歌に触れてみたかったと強く思います。

3 死に対する価値観
お前さんの心配する気持ちは分かるよ。平気だと思っていたのが、いきなりコロッといっちまう事は多いからね。
医学の発達により、突発的な早世は少なくなった。その代わりに、死というものが日常から排除され、よく分からないものとなってしまったのではないでしょうか。私は葉隠に興味を持つだけあって、幼少の頃より死に対して敏感であったらしいです。あれは小学1年生の頃、死に対する恐怖で2か月ほど毎晩泣いていたらしい。死と永遠の概念が怖かったのでしょう。しかし2か月も考え抜くと、今度は開き直って死ぬことは生きることである、という哲学にたどり着いたのだから不思議なものです。

小松雄也

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「プラネテス」幸村誠 講談社 モーニングKC

単行本全4巻。2002年度星雲賞コミック部門を受賞。
作者の現在連載中の作品に「ヴィンランド・サガ」があります。
本作はNHKでテレビアニメ化もされました。ストーリーは異なりますが、どちらも好きです。
漫画では「克己心」が一つのテーマとされて、また作品のいたるところに宮澤賢治の思想が見受けられます。

プラネテス全4巻 完結セット (モーニングKC)
2070年代、人間は地球圏を月面にまでようやく押し広げていた。
夢とエゴに満ちた航宙士志望の青年・星野八郎太(通称ハチマキ)の成長を軸に描く、「惑う人々(プラネテス)」たちの物語。「SF」を一段階進めた大傑作。
2002年度星雲賞コミック部門受賞。2003年にはNHKでアニメ放送開始。そのアニメも2005年度星雲賞メディア部門受賞。同賞の原作・アニメのW受賞は『風の谷のナウシカ』以来だと評判になった。
しがないデブリ(宇宙廃棄物)回収船に乗り組むハチマキは、大きな夢を持ちつつも、貧相な現実と不安定な自分に抗いきれずにいる。同僚のユーリは、喪った妻の思い出に後ろ髪を引かれ、自分の未来を探せずにいる。前世紀から続く大気の底の問題は未解決のままで、先進各国はその権勢を成層圏の外まで及ぼしている。人類はその腕を成層圏の外側にまで伸ばした。しかし、生きることーーその強さも弱さも何も変わらなかった。

1 わが里程標(マイルストーン)
疑いようのないものをもっているのって、素晴らしいことだと思わない?オレは疑問ばかりをもってたから、それを確証に変えたかった。
「疑いようのないもの」という言葉で思い浮かんだのは「結果」です。結果という石を集めれば、足場として踏み台にすることができるます。たまに失敗をして、手の届かないところに行ってしまうこともありますが、少し背伸びをして懸命に挑戦し続ければ、たいていのことは何とかなるものです。もちろん、結果を良くするためには「過程」を充実させることが重要です。一方で、ほんの思い付きのような些細なことがきっかけで、あっという間にとんでもないものが生まれることもあるのですから、人生は面白い。結果のために準備することに越したことはないのですが、リラックスして適度に適当な方が結果はついてくるものです。

2 夢を見たまま死ぬのは幸せか?
わかっているんだろ?一介のデブリ拾い屋にすぎない今の自分には、宇宙船を手に入れることなんてできっこないって。それでも吠え続けたのは、いつまでも夢の途中でいたかったからさ。
今、ここで死ぬ人生は幸せだろうか、と自問としてみることがあります。例え今晩に死ぬことがあっても、毎日を全力で生きるのが武士道たる「葉隠」の極意でありますが、野望の実現をこの目で見ずに倒れるのは、やはり味気ないしつまらないと思います。現実を知って、絶望しないのかと聞かれることもありますが、そのときの状況次第で目の前の問題解決のため、自然とわくわくしてしまうのが私でもあります。何とでもなるし、何とでもするという腹を括る覚悟が必要なのです。

3 ウソつきが歴史を発展させる
アンタはオレのことウソつきだって言ってたけど……。ツィオルコススキーも、ゴダートも、オーベルトもフォン・ブラウンも、宇宙をのぞんだ人間はみんな、はじめはウソつきだったんだよ。
私も、現時点では大法螺吹きと変わらないと思います。もしかしたら大多数の方々は、書店がどれだけ潰れようとも図書館が何をしようと、どんな面白い本を紹介しようが、全く興味はないのかもしれません。地域コミュニティの活性化なんてものは、幻想かもしれません。それでも、私は本屋や図書館という場所が好きであり、世の中には面白い本がたくさんあることを知っています。その確信があるからこそ、続ける力が湧いてくるのです。たった一人のウソつきから歴史を始めましょう。



小松雄也

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「君たちはどう生きるか」 吉野源三郎 岩波文庫

この本が単なる自己啓発本ではありません。
特に強調したいのが、この本が出版されたのは1937年ということであります。
言論統制の嵐が吹き荒れる中で、著者の吉野源三郎は「少国民への教育」という名目の下、これを執筆しました。「君たちはどう生きるか」この本で述べられていることを要約するとこの一言です。
私が子供たちへ最も読み聞かせたいと思う一冊であり、親や教師など子供と接する人たちにも特に読んで欲しい本です。

君たちはどう生きるか
1. 考え方にコペルニクス的転回を
自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしょう。
物事を客観視することは、存外に難しいことです。まして自分のことになると、どれだけ冷静に考えようとしても、主観の域を逃れられません。それでも、自分を客観的に分析したいと思うならば、なるべく多くの友人に話して、意見をもらうのが良いです。さらに、全く別の世代の人たちにも意見を聞いた方が、より詳細に自分の立ち位置を詳しく知ることができます。

2. 先ずは経験してもらう、五感で触れてもらう
絵や彫刻や音楽の面白さなども、味わってはじめて知ることで、すぐれた芸術に接したことのない人に、いくら説明したって、わからせることは到底出来はしない。
この次のページで「ただ書物を読んで、それだけで知るというわけには、決して行かない」とあります。同じような経験がなければ、自分の人生と本とが共鳴しないのです。本を読むだけで、何かを知ったつもりになることは危険でもあります。その危険性については、いつも自分に言い聞かせていることです。自分の目で見て、耳で聞いて、五感を活用して触れた経験こそが、読書にとって何よりも大切なのです。「書を読もう、外で遊ぼう」(寺山修二の発展形)と声を大にして伝え続けます。

3. 善悪の判断を君に問う
肝心なことは、世間の眼よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。
何が人間の立派さであるか、と問われると、私にはまだ明確な答えが見つかりません。そのため、私が好ましいと思う行いについて書きます。私は「人の笑顔と挨拶」が好きです。家の近所を歩く祭には、会う人全員に笑顔で挨拶をしています。返してくれない人はめったにいないので、とても気持ちが良いです。笑顔と挨拶は、初対面の人とも、円滑にコミュニケーションを取ることができる最大の武器です。笑顔と挨拶は私たちの楽しい人生を、さらに豊かにしてくれるのです。


友人とこの本について対談をしたことがありますので、残っていた文章を載せたいと思います。

小松:今回私が紹介する本は吉野源三郎の書いた「君たちはどう生きるか」という本です。この本が描かれたのは、1937年という日本が日中戦争に突入して行ったような時代です。当時の言葉で「少国民」と呼ばれた子供たちに向けられた、読みやすい本となっています。軍国主義の政治体制の中で、ただそれに迎合するのではなく、そういった厳しい統制の中でこそ、失ってはならない、伝えたかった作者の強い思いが込められています。「コペル君」という中学二年生の男の子を主人公にして、大切な感情を学んで行く様子が、小説として書かれています。

加藤:1937年に出されたということですが、今の子供たちが読む際に、古臭さは感じませんか。

小松:確かに時代背景の違いを感じる部分もあります。しかし、これほど平和となった現代と、戦争に突入して行く当時を比較しても、決して色褪せることのない正義感や道徳、科学への関心、そういったかけがえのないものが作中に溢れているのですね。むしろ、当時の人たちが、自由を抑圧されてきた中でも、学びを止めなかったのかという姿勢を、「コペル君」を通じて感じることができるので、今の時代にこそ、読む意義があるのだと思います。

小松:この本と最初に出会ったのは小学生の頃でしたが、難しい、と感じたことも事実です。ただ、主人公の「コペル君」は、当時の私からすると年上の存在でしたので、一種の憧れのような感情がありまして、また科学への関心というものが、自分の中で深まって、育まれて行きました。小説の中では、ニュートンの林檎の話、ナポレオンの武勇の話や、仏教についての話などが出て来ます。作中で「コペル君」が色んなものに興味を持って動いて行くので、楽しく、分かりやすくそれらに触れることができました。

加藤:科学や歴史など、「教養」の書としても読めるのだと思ったのですが、実際にそういう本なのですか。

小松:「教養」というものを難しく大人の言葉で語ることは簡単だと思います。しかし、子供たちにも、初めて学ぶ人たちにも「教養」を分かりやすく教えるということは、とても難しいことではないでしょうか。小学生の時に初めて読んだ本でしたが、現在の大学生の立場から読み返しても、その度に新しい発見が出て来る本なのです。「科学入門」にもなり得る一方で、何よりも「君たちはどう生きるか」という題名の通り、自分たちの人生を様々な場面から振り返ることのできる書ではないでしょうか。

小松:(本文)「人間は、どんな人だって、一人の人間として経験することに限りがある。しかし、人間は言葉というものをもっている。だから、自分の経験を人に伝えることも出来るし、人の経験を聞いて知ることも出来る。その上に、文字というものを発明したから、書物を通じて、お互いの経験を伝えあうことも出来る。
本というものに対して、ハッとさせられた文章です。先人の書いて来た文章というものは、知識の結晶であり、それらの集積である本に触れられるということはどれだけ幸せなことでしょうか。その本をいかに選んで、読んで行くのか、これが私の人生の指針となりました。この文章がきっかけで、読書にのめり込んで行くようになりました。

加藤:本を通じて学ぶ、ということでしょうか。一方で、万巻の書を尽くしても知り得ないものは、何であると思いますか。

小松:本書にも書かれていることなのですが、本を読んだことだけで分かったような気になるな、という意味の文章があります。本当の理解には、行動を通じてこそ得られるのではないでしょうか。飽くまでも本には、誰かの経験や実験に基づいた理論が書かれています。本から学んだことを通じて、自分がどう影響され、どのように行動したのか。実践を重ねる中で、自分だけが感じることのできる何か、それが万巻の書に勝るものではないでしょうか。

小松雄也

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「G戦場ヘヴンズドア」日本橋ヨヲコ 小学館 IKKI COMIXS

2月の投稿は日本が世界に誇る文化「マンガ」から始めたいと思います。
特にこの「G戦場ヘヴンズドア」は私の魂を揺さぶった名作です。
全3巻で完全版も出ています。自分を変えたい人は一読を!

作者曰く、題名は「Gペンの戦場で戦った者だけが見える聖域」という意味であるそうです。
この漫画はどのページを開いても熱い温度を感じられます。
情熱と覚悟が奮い立たせられます。この漫画がきっかけで「赤い戦車」という戸川純の曲と出会いました。この曲もまた私が挑戦するときのBGMとなりました。
胃の底が熱くなった。オレはその時差し出されたこいつの右手が、天国への扉に見えたと言ったら笑われるだろうか―――いやかまやしない―――
人との出会いが、人生をより豊かにしていきます。私は川崎市内での活動を通じて、様々な立場や世代の人たちと会ってきました。自分の話に共感してくれる人、逆に全く興味を示さない人とも一所懸命に話しました。その中で、熱く誠実な、多くの清々しい人たちに巡り合いました。彼らには、必ず受け取った以上の誠実さで応えようと意識しています。まだまだお金はありませんが、信用と信頼を積み重ねて川崎市に貢献して行くつもりです。

2 自分の目を肥やす
鉄男は自分の目でものを見るわ。噂や見かけにまどわされずにね。バラしたところであんたの評価は変わらない。あの子はそういう子よ。あんたはどうかしらね?
審美眼とは、美しいものと醜いものとを見分ける能力です。私も、ネット社会に参画する際に時として批判的になってしまうことがあります。しかし、その場合の多くは、他人の頭を中心に考え、誰かの意見を無意識に猛進してしまうケースがほとんどです。自分の頭で考えたものではないので、少しでも視点が変わる質問を突きつけられると、答えに窮してしまいます。だからこそ、責任を持って自分自身の考えを発展させることが重要なのです。

3 走れ、しかし慎重に
君にこれから必要なのは、絶望と焦燥感。何も知らずに生きていけたらこんなに楽なことはないのに、それでも来るか、君はこっちに。
時間はたくさんあるようで、実はあんまりありません(分かるようで分かるこの感覚はAIがまだ到達できない領域だそうです)。このような矛盾以外の何物でもない言葉でも、感覚的にしっくりきてしまうのが人間であります。ゆったりした時間も素晴らしいですが、毎日何らかの形で刻限は迫ってきています。生き急ぐと言いますが、そのような生き方もどこかで持っておくと良いのかもしれません。絶望は反省を生み、焦燥は尻を叩く。いずれも人生を豊かで充実したものにするためのスパイスであります。

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