「檸檬」梶井基次郎
日本文学史上で最も美しい日本語を書いた人物は誰か?
という議論で三島由紀夫、志賀直哉、中島敦らと並び必ず名前が上がるのが梶井基次郎です。
彼の短編の中で特に「檸檬」と「桜の木の下には」は何度も読み返しました。
声に出して読むと文章をより深く味わうことができる名作です。
えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終押さえつけていた。
私の経験の中で長らく他人と話す機会を持たずに鬱屈とした思いをため込んでいたのは、カナダから帰ってきた後の浪人1年目のことであります。そんなものは自分の心持次第でどうにかなる、と開き直るようになるまでは時間が必要でした。憂鬱だった当時を振り返ってみると、考え方が単一化して極端に走り、悪い方へ悪い方へと自分から転げ落ちようとする傾向にありました。今からすると笑い話でありますが、当時はとにかく必死だったわけです。やはり心の中に適度な適当さを持つことこそが、一番大切なのかもしれません。
2. 物に一目惚れ
実際あんな単純な冷覚や触覚や嗅覚や視覚が、ずっと昔からこればかり探していたのだと云いたくなった程私にしっくりしたなんて私は不思議に思える。
別に普段からそれを探し求めていたわけではないありませんが、稀にそれを見た瞬間、特別しっくりくるものがあります。最近では現在愛用しているシャープペンシル(和製語)との出会いがそうでありました。理屈ではなく、体にフィットするのです。字を書く右手だけではなく、紙を押さえる左手、いや体全部がこのシャープペンシルと適合しているです。私は字を書くだけで楽しい毎日を送っています。
3. 飽きることで選別する
以前はあんなに私をひきつけた画本が、どうしたことだろう。一枚一枚に眼を晒し終わって後、さてあまりに尋常な周囲を見廻すときのあの変にそぐわない気持ちを、私は以前には好んで味わっていたものであった。……
あれだけ好きだったものなのに、ある日突然興味がなくなってしまうことがあります。特に流行ものに対して、私は三日坊主になることが多い傾向にあります。二日程度、異様に熱中した後、三日目には飽きがきてしまうのです。そんな私の性質の中で、身の回りにあるものは洗練されていくはずだが、必ずしもそうとは限らないことが残念で仕方がありません。
小松雄也
小松雄也