「プラネテス」幸村誠 講談社 モーニングKC

単行本全4巻。2002年度星雲賞コミック部門を受賞。
作者の現在連載中の作品に「ヴィンランド・サガ」があります。
本作はNHKでテレビアニメ化もされました。ストーリーは異なりますが、どちらも好きです。
漫画では「克己心」が一つのテーマとされて、また作品のいたるところに宮澤賢治の思想が見受けられます。

プラネテス全4巻 完結セット (モーニングKC)
2070年代、人間は地球圏を月面にまでようやく押し広げていた。
夢とエゴに満ちた航宙士志望の青年・星野八郎太(通称ハチマキ)の成長を軸に描く、「惑う人々(プラネテス)」たちの物語。「SF」を一段階進めた大傑作。
2002年度星雲賞コミック部門受賞。2003年にはNHKでアニメ放送開始。そのアニメも2005年度星雲賞メディア部門受賞。同賞の原作・アニメのW受賞は『風の谷のナウシカ』以来だと評判になった。
しがないデブリ(宇宙廃棄物)回収船に乗り組むハチマキは、大きな夢を持ちつつも、貧相な現実と不安定な自分に抗いきれずにいる。同僚のユーリは、喪った妻の思い出に後ろ髪を引かれ、自分の未来を探せずにいる。前世紀から続く大気の底の問題は未解決のままで、先進各国はその権勢を成層圏の外まで及ぼしている。人類はその腕を成層圏の外側にまで伸ばした。しかし、生きることーーその強さも弱さも何も変わらなかった。

1 わが里程標(マイルストーン)
疑いようのないものをもっているのって、素晴らしいことだと思わない?オレは疑問ばかりをもってたから、それを確証に変えたかった。
「疑いようのないもの」という言葉で思い浮かんだのは「結果」です。結果という石を集めれば、足場として踏み台にすることができるます。たまに失敗をして、手の届かないところに行ってしまうこともありますが、少し背伸びをして懸命に挑戦し続ければ、たいていのことは何とかなるものです。もちろん、結果を良くするためには「過程」を充実させることが重要です。一方で、ほんの思い付きのような些細なことがきっかけで、あっという間にとんでもないものが生まれることもあるのですから、人生は面白い。結果のために準備することに越したことはないのですが、リラックスして適度に適当な方が結果はついてくるものです。

2 夢を見たまま死ぬのは幸せか?
わかっているんだろ?一介のデブリ拾い屋にすぎない今の自分には、宇宙船を手に入れることなんてできっこないって。それでも吠え続けたのは、いつまでも夢の途中でいたかったからさ。
今、ここで死ぬ人生は幸せだろうか、と自問としてみることがあります。例え今晩に死ぬことがあっても、毎日を全力で生きるのが武士道たる「葉隠」の極意でありますが、野望の実現をこの目で見ずに倒れるのは、やはり味気ないしつまらないと思います。現実を知って、絶望しないのかと聞かれることもありますが、そのときの状況次第で目の前の問題解決のため、自然とわくわくしてしまうのが私でもあります。何とでもなるし、何とでもするという腹を括る覚悟が必要なのです。

3 ウソつきが歴史を発展させる
アンタはオレのことウソつきだって言ってたけど……。ツィオルコススキーも、ゴダートも、オーベルトもフォン・ブラウンも、宇宙をのぞんだ人間はみんな、はじめはウソつきだったんだよ。
私も、現時点では大法螺吹きと変わらないと思います。もしかしたら大多数の方々は、書店がどれだけ潰れようとも図書館が何をしようと、どんな面白い本を紹介しようが、全く興味はないのかもしれません。地域コミュニティの活性化なんてものは、幻想かもしれません。それでも、私は本屋や図書館という場所が好きであり、世の中には面白い本がたくさんあることを知っています。その確信があるからこそ、続ける力が湧いてくるのです。たった一人のウソつきから歴史を始めましょう。



小松雄也