「自助論」S・スマイルズ 訳者 竹内均 知的生きかた文庫

序文の「天は自ら助くる者を助く」という言葉は有名です。原著は1858年7月にイギリスの出版社であるジョン・マレー社より刊行されました。日本に入って来たのは明治4年(1871年)【この年まで日本は太陰太陽暦(旧暦)を使用していた西暦とはズレが生じる】明治時代の日本の啓蒙思想家であった中村正直がこの本を翻訳し「西国立志編」と題して日本で出版されました。
この本は福沢諭吉の「学問のすゝめ」と並び、当時の日本で100万部以上を売り上げた明治の2大ベストセラーです。
当時の日本全体の人口が3,480万人であった時代ですから、それだけ驚異的な数字かお分かりいただけるでしょうか。明治時代の青年たちに広く親しまれた本書を是非とも一読していただければ幸いです。

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫
1.日々の生活が自分の人生を変える!
わずかな時間もムダにせず、こつこつと努力を続ければ、積もり積もって大きな成果に結びつく。毎日一時間でもよいから、無為に過ごしている時間を何か有益な目的のために向けてみるといい。
時は金なりという格言がありますが、状況によっては時は金を超えた価値を有することがあります。人が卓越した能力を獲得するためには最低1万時間以上、正しい方法で1つのことに精進する必要があると言われますが、そのための第一歩は、上記の「毎日一時間の努力」です。人の生活は常に忙しく、時間は容赦なく流れていく中で、どうやって時間を工面するのか。私は普段の労働の合間に、朝の時間と寝る前の時間を利用しています。朝は起きる時間を決めて遵守し、夜はその日の課題(企画)が終わるまで情熱を充てます。

2.鉄は熱くなるまで打て!
知識習得に至る道は、勉学に励む人なら誰にでも等しく開かれているし、確かな目標さえあれば、乗り越えがたい困難など何もないはずだ。
卓越した能力を得るために、打ち込む時間と何よりも覚えるまでの反復練習が必要なのは、スポーツでも同じです。「鉄は熱いうちに打て」と格言にありますが、自分が鉄を打ち続けて「熱くする」という心意気こそが、上達の幅に差をつけるのではないでしょうか。高いレベルから、より上の次元に到達するためには、もちろんどこかで「才能の有無」は関係するでしょうが、未熟者である私たちがそれを言い訳にすることは後ろ向きであり、卑怯であります。上達の鉄則は、ただ頭で考えるだけではなくひたすら実践の経験を積んで、我武者羅に鉄を打ち続けることが肝心です。

3.あなたはそれを続けることができるのか
よい習慣を培えば、人格も立派に磨き上げられる。古くから言われるように、人間は習慣の寄木細工であり、習慣は第二の天性なのだ。「行動でも思考でも反復こそが力である」と確信していた詩人メタスターシオは、「人間においては習慣が全てだ。美徳さえも習慣に過ぎない」とまで断言した。
「心が変われば、態度が変わる。態度が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。運命が変われば、人生が変わる」というヒンズー教の教えがあります。人生とは「心」から始まっているという考え方です。だからこそ、心から楽しいと思える対象と出会わなくては、通常は苦しいであろう反復を続けることは難しいのではないでしょうか。続けることから好きになることももちろんあり得ますが、やはり打ち込める情熱の量については、心から好きなものには敵わないと私の個人的な経験から実感しています。あなたは何が心から夢中になれることはなんでしょうか。

小松雄也