「日本人の叡智」磯田道史 新潮新書
教科書に書かれていない人物たちによる、日本人の叡智の蓄積は凄まじいものであったと著者は言います。本作は、98人の日本を牽引してきた人物たちによる言葉をまとめた本です。登場する98人全員を、詳しく調べれば調べるほど、日本という国はとてつもないと実感します。彼らは偉大なる先駆者です。
過去を現在にするは高等なる読書なり。外国の事を国内に適用するは読書力なり。
本を読むことは、自分の引き出しを増やすことだと確信します。蓄えた知識はいつ役立つか分からないし、忘れていくものも多いです。しかし、何かの拍子に自分の道を切り開く発想は、間違いなく読書から生まれてきます(私を見てください!笑)。一度忘れた知識は、決して無駄ではないのです。忘れるということは、その人の血となり骨になるようなもので、短期的な成長は見られなくとも、体の深い所に入っているのであります。忘れた知識が蓄積され、飽和することで体から溢れ出てくる時、素晴らしい人格とアイディアは生まれてくるのです。
2.森山市左衛門(1829~1919)
自分を鍛ふ為に困難が湧いて来るのじゃと思へば、如何なる困難が来ても少しも辟易することなく、益々勇気が加はる。
嫌なことは辛いし、苦しい。楽しくて好きなことだけをしたくとも、なかなかそういうわけにはいかないです。しかし、困難を乗り越えた時ほど自分の可能性が開かれ、気分は高揚し、万能感に包まれる瞬間はないのです。嫌なことを好きになる必要はありません。嫌なことは大嫌いで良いのです。だからこそ、嫌なことを乗り越えるのは楽しく、解消するのは最高であります。困難とは、単なる踏み台に過ぎません。踏み台は素直に踏んでしまえば良いのです。
3.津田梅子(1864~1929)
凡ての事皆智識が本にて成り立つものなり。教育完(まった)からざれば世界の文明に遅る。世界の文明に遅る国は遂に亡びむ。
勉強とは、先生からではなく本から教わるのだ、と考え始めたのはつい最近の事です。先生は本に書いている内容を媒介しているだけなのだ、という暴論も言えます。しかし、完璧に正しい先生が存在しないように、完全な本もまた存在しません。活字で書いてあると、何もかもが一見正しく見えてしまいますが、活字が間違っていることもあります。だからこそ、良い本を見抜ける、高い審美眼を養っていきたいものです。
小松雄也